column

2024.09.05

看護師座談会「年収1000万円を達成する方法」

厚生労働省の調査では、日本の看護師の平均年収は508万1,300円です1)

責任も重く、仕事内容もきついわりに意外と少ない…?と感じる方も少なくないでしょう。

「夜勤に入らなかったらむしろ会社員より給料低いかも」

「せっかく国家資格をとったんだから、もっと稼ぎたい!」

お金のことについてしっかり考えるのは社会人としてごく当たり前のことです。「医療職なんだからお金のことばっかり考えちゃダメ!」なんてことは全くありません。

看護師になってから意外とお金が貯まらない現実に気づき、SNSで看護師が収入を増やす方法について調べたことのある人も多いはず。看護師が収入を増やす方法としてよく言われるのは「転職」「夜勤を増やす」などですが、そのほかに収入を増やす“秘策”のようなものはないのでしょうか。

今回はアザラシライティング塾に在籍する現役看護師4名で「目指せ年収1,000万円!看護師が収入を大幅に増やすためのコツ」と題し、看護師が収入をあげるための方法について座談会を行いました。

あい:大学病院や三次救急のある市中病院で10年程勤務、現在はフリーランスとして活動。

かおる:15年目の現役看護師。外科、内科、循環器、ICUなど一通りの診療科と病院(大学病院、市中病院など)を経験。ストレスで体調を崩したことをきっかけに副業をスタート。仕事&子育て&ライターで活躍中。

ぐりん:7年目の現役看護師。大学病院の内科・外科混合病棟で勤務中。今後の働き方についても考えるように…

あかり:20年目の現役看護師。新生児から慢性期・急性期まで幅広い臨床経験を活かし、看護師ライターとして活躍中。座談会司会者


一言で『看護師が1,000万円稼ぐ』と言ってもいろんな働き方があるので、ざっと調べてみましたが……。

1. 師長を目指す
2. 大学教員で教授を目指す
3. 訪問看護ステーションを開業する
4. 看護師バイトをする
5. アートメイクで稼ぐ
6. 海外で看護師として働く
7. 企業で看護師として働く
8. 看護師以外の副業をする(起業含む)

―こんな働き方が稼げそうですが、みなさんの周りで実際に年収1,000万円を稼いでいそうな人はいますか?

あい

病院の看護師だと、勤務の工夫で上手くいくと800万、師長になると1,000万といった感じですかね。
ただ、昔と違って今は毎年5,000円ほどしか基本給が上がらないんですよね。

かおる

私が働いている病院は師長になれば実現するかも……。

あい

管理職を目指すのは組織の都合や人間関係の問題が大きいので、学生時代から戦略的に目指すのは大変かもしれないです。
管理職は施設によってなりやすいルートが違う印象だけど、ラダーやマネジメント、日々の業務を確実にこなして管理職候補に残っていく、道のりの長い働き方になると思います。
たとえば私の同級生は、出身大学附属病院勤務13年目ですが、まだまだ副師長の声もかからない様子です。規模が大きくなると残っていく人も少ないし、上の人もたくさんいますし。
あとは認定や専門看護師などの資格は給与にさほど影響しないかもしれないけど、専門性が高まるので管理職に近づきやすくはなると思います。

かおる

やっぱり、勤務する病院で昇進して役職を目指すのが一番シンプルな方法でしょうか。このキャリアコースは想像しやすいですよね。


―いつごろ師長になれるのかについては、【日々の業務を頑張って経験年数を重ねて、人間関係をクリアして師長になれるのは還暦近く】という、気の遠くなるような現実も塾メンバーから聞きました。

かおる

師長になるのは、出世が早くて40代あたりですかね。

ぐりん

うちの病院も50歳前後で、異例で40歳代。ひたすら研修とレポートをしないといけなくて大変みたいです。
一般企業みたいに人間関係をよくするために先輩を飲みに誘うのは、コロナ明けの今でもそんな雰囲気が復活していないから難しいですね。

かおる

ウチの病院も飲み会はまだ禁止。キャリアコースを選んでもストレスで働けなくなるとか、身体がもつのかというリスクもあります。
師長で年収1,000万円を目指す場合、まずは大規模な私立大学病院でお給料基準が高いところか、公務員系の病院の2択を就職の選択肢にします。
そして、入職後はラダーを上げていって、健康に気を付けながらキャリアコースを目指せば50代までに師長になれそうかと思います。


―ちなみに師長レベルの看護師が取得する、認定看護管理者の認定講習を終えた看護師は現在約5,000人います。この人数は累計で毎年200人前後増加しているので、各県毎年平均5人前後が新規に看護師長になっていると推測されます3)

2023年第112回看護師国家試験の合格者数は58,152人。国家試験合格者数から見ると師長になるのは1万人に1人以下の狭き門ですが、年齢が上がるごとに潜在看護師になる人数も増えていきます4)

年代年齢階級別の看護職員の潜在率
平均28.37%
25 歳未満22.38%
30~34 歳36.91%
35~39 歳36.01%


さらに、結婚・妊娠・出産などでキャリアコースから離脱したり、クリニックや診療所などで働いたり、正規雇用ではなくアルバイトやパートで働いたりする看護師も多いですから、実際にはそれほどライバルは多くないのかもしれませんね。

―もう少し若い時に達成できそうな”秘策”はないでしょうか?

ぐりん

私の働く大学病院のHCU専任看護師は、経験年数10年未満ですが、夜勤回数が多くて“普通給与+特別手当+残業代+夜勤手当”で年収800万円を超えていると言ってました!


―経験年数10年未満での収入だと考えると、結構高額ですね!ちなみに、夜勤を増やしたり、夜勤専従で手当アップを狙ったりするのはどうでしょうか?

かおる

夜勤を続けるのは、年齢を重ねると体がキツイと思います。15年目の私ですらしんどいときがあります。

ぐりん

私の働く大学病院では、夜勤専任は大学院に通う限られた人しかやっていないみたいです。オペ室の夜勤専従看護師のバイトだと、月収は専任よりも少し多いと聞きました。
32万円/月くらい、と。
ただボーナスはないので、400万円くらいなのかなという印象です。


―ちなみに、夜勤専従のダブルワークもありますよね。4週8休の場合、月8~10日前後の休みがありますからこの休みを活用して夜勤バイトで収入アップを目指す方法です。一例ですが都内では単発の夜勤ナースバイトの平均単価は3~4万円前後です。上手く働くと20万円前後、毎月の給与に上乗せして稼げるかもしません。

インフルエンサーで夜勤専従掛け持ちと投資で年収1,000万達成している方もいますが、やっぱり体力がないと難しいし、生涯に渡って同じ働き方で稼ぎ続けられるかは課題が残りますね。

そのほかにも、塾メンバーからは【訪問看護は訪問件数によって手当が出る会社が多いです!土日返上でたくさん訪問をするか、所長になるなどすれば700〜800万くらいでしたら行けます!夜勤はなくなりますが、休みが少なくなります。】とのご意見をいただきました。

―では、転職はどうですか?

ぐりん

国公立での転職だと給与体系が引き継がれるから、昇給のペースが維持されるという噂が…。まったく違う経営母体だとリスタートですが、引き抜きだと給与アップの可能性があります。

あい

看護師でより成功率が高そうな働き方は、インフルエンス力も兼ね備えた上での美容クリニック看護師やアートメイク看護師ですかね。SNSが活用しやすい時代なので、ファンがつくと指名料が高くなって、自分のQOL向上にも直結します。アートメイクは、全盛期は1〜2年下積みでスクールや先輩から直接学んでいましたが、今は勤務先でも学べるようです。
最近多いような気がするのは、開業医で師長や部長として出世するパターンですかね。
自由診療できる科の開院メンバーになると給与も上がりやすいですし、年収1,000万円がちょっと近くなると思います。
医師から声がかかるように、先生とも仲良くしておいたほうがいいかも!


―塾メンバーから【国公立病院は公務員・準公務員の扱いで副業禁止なので、地道に勤続年数を稼ぐのが堅実】というご意見が出ました。

ぐりん

公務員は副業が限られるし、大学病院でも副業禁止のところが多いです。

あい

公務員系は副業ができません。勤続年数を稼いでも年収1,000万円に届かなそうだとか、勤続年数が短い段階で達成したいなら、転職を考える選択肢もありますよね。
稼げるクリニックで働く、開業するなど…。転職してから副業できる状態になれば、別のビジネスとも掛け合わせられますし。

―それから、転職とは少し違うかもしれませんが、実は大学教授も年収1,000万円を超えるという情報が!臨床を数年経験して大学院へ進学し、研究の実績を積み重ねて教員、助教、講師、准教授、教授になるのが一般的なキャリアのようです。

塾メンバーからも【小学校のママ友に看護師→看護学部の教授が2人います】、【40代半ばで複数お子さんもいます】と。妊娠・出産、子育てを経験しながらもキャリアが積み上げられて、年収1,000万円達成できる魅力的な働き方ですね。

かおる

そうですね。でも、数年前まで看護大学立ち上げがピークだったのですが、最近は落ち着いてきました。募集が減る可能性があるのがネックかもしれません。

ぐりん

うちの大学は教授枠があまりなくて。講師から准教授に上がるのに8年かかってるので、その先は果てしなそうです…。


―2023年度時点の看護大学教育課程数は327大学あります6)。少子化の波もあって、最近の調査によると大学教員の定数は減少傾向です。将来はさらに狭き門になるかもしれませんね。でも、看護の専門性を極めたい人には絶対におすすめしたい働き方なので、チャンスがあればトライしてみたいですよね。


―あとは、アメリカの看護師は年収が高いと聞いたことがあります。海外で働くと収入がアップする可能性はあるのでしょうか。現地の言語が堪能なことが大前提で、働くのも大変そうなイメージがあります。

ぐりん

アメリカで働くにはNCLEXやヴィザスクリーンという試験や審査をパスする必要があります。相当な勉強量が必要で、学生時代に国試と同時進行とか、就職直後に合格するのは難しいかもしれません。
キャリアも積みたいけど、人生設計も考えると海外で働くのはかなり大変そうですね。


―その試験がスタートラインなんですね。塾メンバーからも【準備に1〜2年かかるので、実際に働く数年後の経済状況とか情勢も考えたほうがいい】、【給与がいい分物価も高いから、年収ほど稼げる実感はないかもしれない】という意見もいただいています。

さらに、アメリカではナースプラクティショナーになると、結構お給料がよくなりますよね。ナースプラクティショナーは、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療を行える看護の公的資格です。

ぐりん

アメリカでナースプラクティショナーになるには、次のような流れですね。


看護学位取得→NCLEX-RN合格・正看護師資格取得
→大学院に入学(Master of Science in Nursing)
→大学院を卒業
→希望職種に特化した試験を受験(NP Certification Board Exam)
→州毎の規定に基づきナースプラクティショナー登録
→ナースプラクティショナーとして就労開始


アメリカ労働局のデータでは、ナースプラクティショナーの平均年収はUSD118,040。1ドル150円で換算すると、日本円で約1,770万円になります7)

さらに、州や専門性によって給与にも差がありました。

勤務場所年収(USD)年収(1$=150円換算)
General Medical and Surgical Hospitals
一般医療・外科病院
122,960USD約1,840万円
Home Health Care Services
在宅医療サービス
133,170USD約2,000万円
Psychiatric and Substance Abuse Hospitals
精神・薬物依存更生病院
131,830USD約2000万円
Outpatient Care Centers
外来診療センター
129,190USD約1,950万円


―ナースプラクティショナーの給与が診療科によって違うのは、初めて知りました。専門性がちゃんと評価されてていいですね。日本と物価の違いを考慮しても、それだけ稼げていれば高収入と考えてもよいですよね。

アメリカでナースプラクティショナーの資格を取得するには時間と費用が掛かるかもしれませんが、数年で回収できてしまうくらい年収が高いのでアメリカで働くのはすごく魅力的ですね!英語の苦手な私には、縁遠い話ですけど…。

―では起業や副業はどうでしょうか?

かおる

不動産投資は…看護師はカモられたり、騙されるパターンが多いので、本気で勉強しないと厳しいのが現実…。周りを見ると、物件選びが重要だなって思います。

あい

看護師から独立して、ビジネスで活躍されている方はたくさんいらっしゃいますよね。成功した起業家が、元看護師だったというだけなのかもしれませんが……。
開業・起業など自分のビジネスの方が、経験や努力で年収1,000万円を達成できそうな気がします。
私自身もフリーランスで看護師×公認心理師として働いていますが、看護師時代より収入がアップしました。


―私は副業が一番合っていて、専門性を活かしてライターをしています。個人的には、年収1,000万円稼ぐのにライターはおすすめだけど、それだけ稼ぐには時間のやりくりが大変です。

あと、副業の水商売は絶対にNG。本業をクビになったという話を毎年のように耳にしますので、副業選びって本当に大事だなと思います。

ぐりん

あらためて、看護学生の卒業後の新卒キャリアを思い返してみました。

□看護師(病院、診療クリニック、美容クリニック、訪問診療)
□助産師
□保健師、産業保健師
□企業社員(ヘルスケア系、広告系)
□起業
□大学院や専門学校 


ここから、たとえばキャリアコースを歩みたい人は管理職へ。専門を極めたいと思った人は数年間大学院に通って、声がかかれば教授へのキャリアを重ねるんでしょうね。

でも、私は大学4年生の時にキャリアコースなんて考えてなかったです。みんな漠然と、これくらいで結婚して仕事辞めたいねーって。それを考えると、だいたいキャリア10年目くらいは●●円の年収だから、目標の年収1,000万円を目指すには〇〇円くらい稼いだ方がいいな……。じゃあそのギャップを埋めるためにはどうしようか?キャリアコース?転職?大学院?って、考えていくのかな。

―いろいろな働き方をしている先輩を見たり、こういう記事を読んだりして自分にあった働き方を見つけてほしいですよね。ちなみに経験年数20年目になると同期の半分は潜在看護師、あとはパートとか……。バリバリ臨床第一線で働いてるのは私ともう1人くらいで、そのもう1人は認定看護師です。後輩は海外でワーホリから現地で看護師になったり、大学院に通って専門性を深めたり、産休をとって働いていたりと本当に多様な働き方をしています。

あい

同期が出身大学の教員になっています。海外ナースは、臨床経験を重ねた私たちでも目指せる新しいキャリアかもしれないですね。

ぐりん

卒後7年目の私の友人は色々なキャリアを重ねていて、収入もこれから多様化しそう。一例を紹介しますね。

・病院看護師→美容クリニック→診療クリニック+個人でアートメイク業務
・病院看護師→オーストラリアにワーホリ
・助産師5年→大学院2年→助教


―卒後7年目でもいろんな働き方があるんですね!

普通に働いていれば、看護師の平均年収は500万円程度。年収1,000万円を目指すためには、さらに500万円プラスして稼ぐ必要がありますね。

どうやったらプラス分を稼げるのでしょうか?年収アップを目指せる看護師の働き方について、座談会で出てきたアイディアを振り返ってみましょう。

● 出世して看護師長や教授などの役職に就く。目指す人が少ないので意外と穴場の可能性あり!

● 頑張って夜勤、夜勤専従、休日出勤の手当を増やす、美容医療分野で指名をたくさん得る

● 英語など、他言語を学んで看護師の給与水準が高い国で働く

● 副業、起業で看護師以外の業務も行う

看護師にはいろいろな働き方があります。「コレをすれば絶対に稼げる」と断言するのは難しいですが、まずは臨床で興味があること、専門性を極められることを見つけること。そして身体と心を大切にして、自分らしくキャリアを重ねていくのが年収1,000万円を稼ぐ秘策ですね。本日は貴重なお時間ありがとうございました!

参考資料

1)厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

2)P5 P67 2012 年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書

3)認定看護管理者認定数推移 日本看護協会

4)厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業) 「新たな看護職員の働き方等に対応した看護職員需給推計への影響要因と エビデンスの検証についての研究」 分担研究報告書(令和 2 年度)

5)看護系大学(国公私立)教員数に関する調査結果 一般社団法人日本看護系大学協議会 データベース委員会 一般社団法人日本私立看護系大学協会 大学運営・経営委員会

6)2023年度専門看護師教育機関・課程一覧(107大学大学院327教育課程)

7)アメリカ労働統計局

CONTACT
お問い合わせ

ご意見、ご質問がある場合はこちらから
お問い合わせください。