海外赴任や留学でアメリカにやってくるとき、頭を悩ませるのが「家電や生活環境の違い」です。日本から使い慣れたものを持ち込むべきか、現地で調達するべきか。電圧の違いやサイズ感の壁もあり、最初は戸惑うことばかりですよね。
私は現在、マサチューセッツ州のボストンエリアに滞在中ですが、この数ヶ月間で我が家の生活を劇的に快適にしてくれた「なくてはならない相棒」たちがいます。今回は、アメリカ生活で大活躍している便利な調理家電・設備を4つ、そして「欲しかったけれど見送った大物」についてご紹介します。これから紹介する4つ以外に、日本からは炊飯器と変圧器を持参しました。
【ガスオーブン】豪快かつ放置でごちそうが完成する頼もしい相棒
まず家電というより設備ですが、声を大にして伝えたいのが「ガスオーブン」です。
私たちが暮らすのは少し古めの物件ということもあり、キッチンには4つ口のコンロとその下部に大きなガスオーブンが一体型で備え付けられています。日本の一般的な魚焼きグリルしか知らなかった私にとって、この大容量オーブンとの出会いは衝撃でした。
日本では大型のオーブンレンジを使っていましたが、サイズ感はアメリカのガスオーブンとは比べ物にならず、オーブンとして使っているときはレンジが使えず、また余熱に時間がかかることも難点でした。ガスオーブンの何が素晴らしいって、まず予熱が「一瞬」で完了すること。そして、大きなピザが丸ごとそのまま入る圧倒的なサイズです。
アメリカのスーパーに行くと、バーベキュー用の味付けされた巨大なリブ肉や新鮮な野菜が所狭しと並んでいますが、これらを天板に並べてオーブンに放り込み、焼くだけで、食卓がパッと華やかになるゴージャスなお料理が完成します。塊肉を使ったローストビーフも、火加減に怯えることなく失敗知らず。最近のお気に入りは冷凍カリフラワーにオリーブオイルとその日の気分で好きなシーズニングをあえて焼くだけの簡単副菜です。アメリカのダイナミックな食肉文化を、自宅で最高に美味しく楽しむための必須設備です
【ホットポット(スロークッカー)】アメリカの塊肉の真価を知る魔法の鍋
次にご紹介したいのが「ホットポット(スロークッカー)」です。
実は、こんな調理家電があることを私はアメリカに来るまで知りませんでした。日本で言うなら、放ったらかし多機能調理家電の「低温調理」だけ、に近いかもしれませんが、もっとシンプルでアナログなものです。
私が使っているものは、土鍋のような重厚な陶器の鍋を専用の外枠にセットし、スイッチは「オン/オフ」のみという非常にシンプルな構造。使い方は驚くほど簡単で、アメリカのスーパーに山積みにされている巨大な塊肉をかなり大きめに切り、野菜などと一緒に放り込んで半日ほどコトコト煮込むだけ。決してグツグツではなく、コトコトです。沸騰するかしないかくらいの温度設定で、焦げ付いたことはありません。
これだけで、お肉は信じられないくらいホロホロに柔らかくなり、スープやタレの旨味がギュッと染み込みます。カレー、シチュー、スープなど、どれを作っても絶品の仕上がりに。「あ、アメリカの安い塊肉の正しい食べ方はこれだったのか!」と目から鱗が落ちた瞬間でした。
【プロジェクター】テレビを買わないという選択
キッチンを離れてリビングの家電を一つ。元々我が家はテレビをほとんど見ない家庭だったため、ボストンでの生活を始めるにあたって「テレビをわざわざ購入すべきか?」という大きな迷いがありました。
そこで代案として浮上したのが「プロジェクター」です。
ちょうどリビングに良い具合の白い壁があったこと、そしてプロジェクターなら場所を取らず、帰国時にも荷物にならずに日本へ持ち帰れることが決め手になりました。
ちょうど今年はサッカーのワールドカップがアメリカ開催の年。FOXを契約して、壁一面の大画面で家族みんなでサッカー観戦にあけ暮れました。最近は子供達ともっぱらアメリカ映画にハマっています。スターウォーズやスパイダーマン、E.T.やホームアローンなどの名作を毎日のように観ています。テレビの圧迫感もなく、映画館のような臨場感を自宅で味わえるプロジェクター生活は、我が家のライフスタイルに完璧にフィットしています。
【窓用クーラー】ボストンの夏の命綱
最後は家電ではなく夏の必需品、ボストンの「窓用クーラー(ウィンドウAC)」です。
ボストンは北海道とほぼ同じくらいの緯度に位置しており、冬の寒さはマイナス2桁になるほどの寒冷地です。そのため、物件によってはそもそもクーラーがついていない部屋も珍しくありません。我が家の物件も、最初はクーラーなしでした。
しかし、我が家には暑がりが多いこともあり、早々に窓用クーラーを2台購入し、リビングと寝室に設置しました。これが本当に良かったです。ボストンも夏は夏でした。東京のような蒸し暑さではありませんが、30℃超えの日も何日もありました。
皆さん、日本の住宅街ではあまり見かけない「窓用クーラー」の構造をご存知でしょうか? なんと、文字通り「窓の隙間に本体を挟むだけ」というワイルドな仕様です。
見た目はまるで小型の室外機そのもの。そして何より驚いたのが、その「重さ」です。とにかくめちゃくちゃ重く、私一人で運搬するのは命がけの重労働。そんな重量級の機械を、窓の上下で挟んで固定しているのです。
周囲を見渡すと、ボストンの街ではごく一般的なもので、そこらじゅうの窓からこの室外機が突き出しています。便利なのですが、歩いていて真下を通るときは「万が一落ちてきたら……」と少し怖くなり、今でも窓用クーラーの真下は歩かないようにしています(笑)。
番外編:気になりつつも断念した「お肉スライサー」
ここまで我が家の便利家電をご紹介してきましたが、実は現地で「すごく便利らしい」と聞きながらも、我が家では導入を見送った大物家電があります。それが「お肉スライサー」です。
ご存知の方も多いと思いますが、アメリカの一般的なスーパーには、日本のような「薄切り肉」がほとんど売っていません。日系やアジア系スーパーに行けば手に入りますが、やはりお値段はかなり割高になります。
そのため、一定数の日本人の間では「お肉スライサー」を自宅に持ち、塊肉を安く買って自分で好みの厚さにスライスし、小分けにして冷凍するというライフハックが流行しています。毎日のように薄切り肉を使った生姜焼きや肉じゃがを食べられるなんて、想像しただけで羨ましすぎる環境です。
しかし我が家の場合、限られた滞在期間であること、そして何よりキッチンでなかなかの場所を取るサイズ感がネックになり、購入は見送ることにしました。
その代わり、先ほどご紹介した「ガスオーブン」や「ホットポット」を駆使して、塊肉を豪快かつ美味しく食べる調理法を極める道へと進みました。結果として、これもアメリカ生活ならではの楽しい食文化の開拓になったと感じています。



