アメリカで子どもを保育園に通わせるようになって、最初に戸惑った行事のひとつが、Teacher Appreciation Weekでした。
直訳すれば、「先生に感謝する週間」です。
毎年5月ごろ、学校や保育園で、先生にカードやプレゼントを渡したり、保護者が差し入れを用意したりします。
でも、何を渡せばよいのか。いくらくらいが自然なのか。個人で渡すのか、クラスでまとめるのか。周りの家庭とそろえたほうがよいのか。そもそも、先生に個別に贈り物をしてもよいのか?
日本で育った感覚の私には、まったく新しい行事であり、最初はうまくできませんでした。
そんな私がTeacher Appreciation Weekを3回経験して感じたことを、まとめてみます。
1年目:何のことかわからず、何もできなかった
1年目のTeacher Appreciation Weekは、今振り返ると、失敗でした。
当時、園からのお知らせで、Teacher Appreciation Weekという言葉は見ていました。けれど、保育園に入ってまだ1ヶ月ほどで、日々の送り迎えや園とのやり取りだけで精一杯でした。
正直なところ、「何か先生に感謝する週なのかな」くらいには思ったものの、具体的に何をするものなのかわからず、調べることも怠ってしまいました。
日本の感覚では、先生に個別に贈り物をすることに、少し抵抗もありました。感謝を伝えること自体は悪いことではないはずなのに、「個人的にプレゼントを渡しても大丈夫なの?」とも思ってしまったのです。
周りの保護者が何をしているのかもわからず、誰に聞けばよいのかもわからず、結局、様子見のまま過ぎてしまいました。
もちろん、それで先生たちの態度が変わったわけではありません。
それでも今振り返ると、もっと素直に感謝を伝えればよかったと思います。
SNSなどを見ていると、Teacher Appreciation Weekに何もしなかったことで、先生の態度が変わったと感じた、という話を目にすることもありました。実際にどこまでそうなのかはわかりません。
ただ、感謝を伝えること自体は前向きなことです。失礼にならないか、周りと違わないかなどと考えすぎる前に、できる範囲で何かすればよかったと、今では思います。
2年目:折り紙とメッセージで参加してみた
2年目は、少しだけTeacher Appreciation Weekに参加することができました。
その年は、クラスの保護者の代表の方がとても熱心に企画してくれました。隣のクラスとも合同のような形で、大きなリンゴの木のアートを作り、そのリンゴの中に先生へのプレゼントやメッセージを入れる、という企画だったと思います。
私たちは、折り紙とメッセージで協力しました。費用に関しては、少し出したかもしれませんが、中心は手作りのものとメッセージでした。
アメリカで生活していると、先生へのメッセージに“Best teacher ever”のような、かなりまっすぐで強い褒め言葉がよく出てきます。日本語にすると伝説の教師のようなイメージになってしまいますが、わりとカジュアルによく見かけます。
最初は、そういう言葉をどのくらい使えばよいのかも迷いました。
ただ、自分たちは使い慣れていない分、できるだけ具体的なことを書くようにしました。
たとえば、日本語の名前で子どもを呼んでくれたこと。日本語の歌を覚えてくれたこと。まだ英語も文化も不慣れな子どもに対して、その子らしさを大切にしながら関わってくれたこと。
そういう個別のエピソードを入れてメッセージを書いたところ、思っていた以上に先生たちが喜んでくれたように感じました。
SNSでは、「先生に喜ばれるのはギフトカード一択」という意見を見ることもありました。保育や教育の仕事が、必ずしも十分に報われているとは限らないことを考えると、現金に近いものが助かるというのは、たしかにそうなのだろうと思います。
でも、実際に渡してみると、お金に近いものだけが答えではないのかもしれない、とも感じました。
手書きのメッセージやアートでも、ちゃんと気持ちは伝わる。2年目の経験で、そう感じました。
3年目:クラス共同ギフトをまとめる側になった
3年目は、流れで私たち夫婦がクラスの共同ギフトをまとめることになりました。
誰かがやらなければいけない雰囲気になり、気づいたら自分たちが手を挙げていた、という感じです。正直、慣れているわけではありませんでした。英語でのやり取りも、保護者同士の調整も、自信があったわけではありません。
それでも、せっかくなら先生たちにきちんと感謝を伝えたいと思いました。
クラスの家庭には、1家庭あたり40ドルくらいを目安に、ただし多くても少なくても大丈夫、という形で声をかけました。すると、40ドルより多い金額を渡してくれる家庭もあり、思っていたよりも多くの金額が集まりました。
集まったお金はすべて先生たちへのギフトに使いました。ベーグルのセットを用意し、それぞれの先生にはAmazonのギフトカードを準備しました。最終的には、先生1人あたり100ドル近い金額のギフトカードになったと思います。
それに加えて、クリップボードの裏側に寄せ書きを貼り、デコレーションしたものも作りました。これはInstagramで見かけたアイデアを参考にしたものです。
正直、最初は少し不安もありました。手作りのものはあまり喜ばれない、という話を聞いたこともあったからです。忙しい先生たちにとっては、実用的なギフトカードのほうがありがたいのではないか。そう思う気持ちもありました。
でも、実際に渡してみると、先生たちはかなり喜んでくれました。
それは、単なるお世辞というより、「自分たちのために準備してくれた」ということがちゃんと伝わっているような反応でした。ギフトカードももちろん喜んでくれたと思いますが、寄せ書きやメッセージにも目を留めてくれているのがわかりました。
もうひとつの子どものクラスでは、別の保護者のお父さんがリーダーシップを取って、Teacher Appreciation Weekを企画してくれました。
その企画はかなり本格的でした。1週間を通して、毎日小さなお楽しみが用意されていました。ドーナツの日、コーヒーの日、ギフトの日、みんなで寄せ書きをする日。さらに、その予定を知らせるポスターまで作られていました。
そこまでしなければいけない、という話ではありません。
でも、そこまで形にしてもらった先生たちは、本当にうれしそうでした。見ているこちらまで、「ああ、こうやって感謝を伝えることは、ちゃんと意味があるのだな」と思いました。
結局、何を渡すのがよいのか
では結局、Teacher Appreciation Weekには何を渡すのがよいのでしょうか。
たった3年の個人的な経験では、これが正解です、とはとても言えません。
ただ、今の私の答えは、「助かるもの」と「気持ちが伝わるもの」の両方があるとよい、ということです。
ギフトカードは、おそらく現実的に助かるものだと思います。先生の好みを大きく外す心配も少なく、使い道も選べます。複数の先生に渡す場合にも、クラスで金額を調整しやすいです。
一方で、ギフトカードだけが答えではないとも思います。
手書きのメッセージ、子どもの絵、折り紙、寄せ書き、クラスみんなで作った小さなギフト。そういうものにも、思っていた以上に力がありました。
個人の家庭だけで全部を準備しようとすると、限界もあります。忙しい家庭もあれば、費用を多く出すのが難しい家庭もあります。逆に、企画や飾り付けは難しくても、お金で協力してくれる家庭もあります。
その意味では、クラスで協力できるのはよい形でした。
全員が同じ金額を出すのではなく、それぞれができる形で参加する。それがよいのかもしれません。
まとめ:よい気持ちは、伝えてよかった
感謝のような前向きな気持ちは、少し不格好でも本人に届く形で伝えてよいのだ、と感じています。
違う国で暮らしていると、知らない文化や習慣に出会うたび、周りの顔色を見てしまうことがあります。私も1年目はまさにそうでした。
でも、言葉がつたなくても、文化に慣れていなくても、「見ています」「助けられています」「ありがとうございます」という気持ちは、伝えてよかったのだと思います。
大切なのは、先生たちの日々の関わりを、こちらが当たり前だと思っていないことを目に見える形で伝えること。
1年目はうまくできなかった私ですが、今はそう思っています。